感想「映画ドラえもんのび太の宝島」
ネタバレ記事です。
ちょっと話題だったので見てきました。随所に工夫が見られる良い映画でしたので感想を記しておきます。
ここが良い:「宝島」の解釈と見た人を驚かせる宣伝の仕組み
「君の名は。」などで知られる映画プロデューサ、脚本家の川村元気さんがこの映画の脚本をしています。彼の創作における持論として、作品には「発見」と「発明」が必要だということを述べています。
「映画ドラえもんのび太の宝島」における脚本上の発明は「宝島」の解釈にあると私は感じました。
普通、「宝島」と言われたら海の大航海と海賊との戦いをイメージしますよね?
しかし今作は違います。
作品中に登場する宝島はなんと時空を旅しながら海中の宝と地熱のエネルギーを集めている潜水艦であり、やがて滅ぶ地球から人類を救うため宇宙に旅立つ宇宙船であると明かされるのです。
しかも、映画を見る前の段階ではそうであるとは微塵も感じさせません。
CMも、前売り券プレゼントも、メインビジュアルも、想起させるのは我々が予想する海の大冒険です。
しかしながらそうやって膨らんだイメージ通りのものは映画冒頭夢オチで提示され、実際のシナリオは全く予想していなかった方向に転がっていきます。
そして映画を見終わったあとCMやら何やらを見て、「騙す気満々じゃん!」と思わさせられます。
うまく宣伝と連携して視聴者を驚かせる設定作りは感心しました。
ここが良い:親世代に刺さるメッセージ
こういった映画の主な視聴者層は子供と、それを連れてくる親世代です。興味を持つのは子供ですが、最終的に決済の意思決定をするのは親ですので、親にも刺さる映画にすることは意味があります。
この作品も例にもれず、親世代に刺さるメッセージ性を盛り込んでいます。
この作品では、最終的に「子どもたちの未来のために家庭を顧みずがむしゃらに働く親」対「家族がバラバラになったかのような感覚に孤独感を感じる子供」という図式を解決する展開になります。そして、子供たちが自分の気持を親に伝え親の計画を挫くことで親は自分の計画を諦めて子供たちにもう一度向き合ってみることを決めるというのがオチになります。
子どもたちの生活や将来のために両親共働きをする家庭が増えているこのご時世です。子どもたちはあまり親に面倒をみてもらえないのでしょうし、親も子供に向き合う時間が十分に取れていないのではないでしょうか?
そういった中だからこそ、「未来のために必死に働くのもいいけど、今の子供たちの気持ちを忘れていませんか?」と伝えてくるこの映画が響くのかもしれません。
ここがいまいち:力技の解決策、解決してない人類の未来
今作の悪役は2300年に人類が滅びている未来を見、人類を救うために人類が生きていける環境の船を作って宇宙に出ることを目的にしています。ドラえもんたちはその過程で手違いでさらわれてしまったしずかちゃんを助けるため、またゲストキャラの妹をその船から連れ出すためにこの悪役と戦うことになります。
最終的に地熱のエネルギーを回収して宇宙に飛び立つのを強行しようとする悪役を挫きしずかちゃんを救い、ゲストキャラの親である悪役はゲストキャラやその妹と共に未来に帰ります。
結局悪役が大義としていた人類が滅びる未来を救うということに関しては諦めさせられたことになりますし、その解決も気持ちがぶつかって説得されたというよりは、いままでやってきたことを台無しにされて諦めざるを得なくなったという感じです。
この点に関してはいまいちで凄くもやもやしました。子供たちと未来に帰って一緒に未来を救う方法を考え直すとか、そういった描写の1つでもあれば納得するんですがね。
総括
自分自身子供向け映画を普段から見ているわけではないですが、全体としてとても楽しい映画でした。完璧というわけではありませんが、子供が親になった時にもう一度見ても楽しめる映画だと思います。